日本翡翠情報センター(糸魚川翡翠・ヒスイ海岸・翡翠勾玉・翡翠大珠・ひすい)

日本翡翠と勾玉、天然石の専門店《ザ・ストーンズ・バザール》が運営する日本翡翠専門のホームページです。『宮沢賢治と天然石』『癒しの宝石たち』『宝石の力』(ともに青弓社刊)の著者・北出幸男が編集・制作しています。(糸魚川翡翠・ヒスイ海岸・ヒスイ採集・翡翠勾玉)。

MINERALOGY

挿絵 肉眼で識別できるほどに大きく結晶したヒスイ輝石の菊花状結晶。フォッサマグナ・ミュージアムで鑑別済みとか。同じ輝石類でもエジリンやスポジューメン(クンツアイト)には結晶が成長したものがたくさんあるのに、ヒスイ輝石(ジェダイト)では目視できるほどに大きな結晶は大変珍しい。深海潜水艇とてたちまちのうちにペシャンコになる超高圧下で結晶が成長するには、1千万とか1億分の1の割合で結晶が成長する条件が整った場合に限られるのだろう

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『ヒスイの科学』(茅原一也、自費出版、1988・昭和63年)
日本翡翠の鉱物・地質学研究のためのバイブル的な本。茅原一也教授退官記念会の出版で非売品。日本翡翠の研究は宝石学的にはマイナーな領域であり、鉱物学的にはあまりに地域限定であるため、まとまった研究書は少ない。日本とビルマだけではなく、中南米やヨーロッパ産のヒスイ輝石についての記載もある。同書を日本翡翠情報センターに寄贈してくださったN氏に感謝。

図録『翡翠展・東洋の至宝』(国立科学博物館、2004・平成16年)
2004年11月13日-2005年2月13日まで国立科学博物館で開催された「翡翠展・東洋の至宝」の図録。これ一冊を熟読すれば翡翠のオーソリティになれそうなほど中身が濃い。ここに欠けている中南米の古代文明と翡翠との関連は、マヤ・アステカ・ティオティワカンなどをテーマにした各種展覧会の図録類に散見できる。

『よくわかるフォッサマグナとひすい』(フォッサマグナ・ミュージアム、2010・平成22年)
奥付に発行年月日がない、たぶん2010年発行と思う。愛情をこめて批判するなら、糸魚川市教育委員会発刊の本にはプロの編集者が必要。『ヒスイの科学・茅原一也』以降の日本翡翠研究について学ぶのに適している。全部を熱心に読みたいのだけれど、寝転がって読むには重すぎる、通勤電車に持ちこむにはかさばりすぎて困っている。

『ふるさとの翡翠写真集』(フォッサマグナ・ミュージアム、2004・平成16年)
日本翡翠ファンには垂涎の的、日本翡翠原石の写真があふれんばかりで目が離せない。佐賀県宇木汲田(うきくんでん)遺跡から出土した緑色ロウカン質の獣形勾玉には、自分の前世はあそこにあったんだと思ってしまうような迫力があった。地方の自治体にお金があった時代の本で、一般の出版社からはとうていこのように豪華で採算に合わなさそうな本は出版できない。

『とっておきのヒスイの話 第3版』(宮島宏、フォッサマグナ・ミュージアム、2010・平成22年)
日本翡翠のイロハを知るには手頃な入門書。一読すれば昭和になってからの日本翡翠再発見の出来事や翡翠の鉱物学、糸魚川近辺で発見された新鉱物について理解を深められる。ここで述べられている翡翠生成にまつわるエキサイティングな意見は筆者の仮説なのか、科学的に合意された説なのかわかりづらいところが隔靴掻痒の感がする。そこらあたりをもっと詳しく知りたい!

『ジェモロジィ 2009年3月号』(全国宝石学協会、2009・平成21年)
ダイアモンドの鑑定問題がこじれて倒産してしまった(株)全国宝石学協会の機関誌。2009年3月号には4ページのオンファサイトの記事がある。翡翠は東洋の宝石で、欧米では人気がない。結果として欧米では鉱物学的に翡翠=ヒスイ輝石ということになって、日本もこの影響下にある。けれど東洋では文化的伝統としてオンファサイト+ヒスイ輝石も「翡翠」として扱われてきた。ここらあたりのことを日本の宝石研究機関は理解できない。私たちはもう欧米の文化植民地から卒業したつもりでいるのだが。

『ヒスイ文化フォーラム2003・花開くヒスイ文化』(ヒスイ文化フォーラム委員会、2003・平成15年)
1986年から90年にかけて3回開催された糸魚川市主催の「翡翠と日本文化を考えるシンポジウム」は、第4章で詳述するように日本翡翠を称揚する画期的な出来事で、これによって日本翡翠は1500年間の眠りから目覚めた。本書はその続編ともいえる2003年に開催された同じタイトルのレジュメ(講演記録)。縄文時代に糸魚川が文明のメッカであったことに感激してしまう。

『ヒスイ文化フォーラム2005・神秘の勾玉』(ヒスイ文化フォーラム委員会、2005・平成17年)
2005年9月に糸魚川市で開催された同タイトルのフォーラムのまとめ。図版がたくさん掲載されていて、図版を眺めているだけで勾玉などの編年がわかるのがありがたい。

『ヒスイ文化フォーラム2007・ヌナカワとヒスイ』(糸魚川市教育委員会、2008・平成20年)
2007年8-10月に糸魚川市で開催された「ヒスイ文化フォーラム2007」の講演記録。主催は2003-5年が「奴奈川姫の里・変身劇場実行委員会」から「糸魚川市」に変わっている。プレートの沈みこみ帯・付加体とよばれる高圧低温地域で翡翠が誕生し地表へと押し出されてくる過程がわかりやすく解説されている。ヒスイ輝石は曹長石が変成されて誕生するという従来の説に対して、ヒスイ輝石は熱水のなかで誕生するという意見も興味深い。

『天然石のホン02 翡翠』(マリア書房、2009・平成21年)
翡翠テーマのムックの一冊。日本翡翠とビルマ(ミャンマー)翡翠、翡翠類似石のたくさんの写真が掲載されている。ひところ流行った鉱物図鑑的な本の翡翠版で石たちの写真を眺めているだけで楽しくなる。

『宝石宝飾大事典』(近山晶編・著、近山晶宝石研究所、1995・平成7年)
これよりも新しい新装版が出版されている。翡翠原石に含まれている鉱物について調べるのに欠かせない。この参考書がなかったら自分の著作『宝石の力・幸運は形に宿る』や 『癒しの宝石たち・パワー効果と活用法の事典』は書けなかった。

『新宝石学』(久米武夫、風間書房、1963・昭和38年)
昭和28年に発行された『宝石学』の新装版で、旧仮名遣い、外国の地名も漢字で書いてある。翡翠は玉(ぎょく)の項にまとめてあって、硬玉翡翠は日本では採れないと書いてある。宝石ごとの分子の構成比率が記載されているなど、いま読んでも非常に役立つ。

『海辺の石ころ図鑑』(渡辺一夫、ポプラ社、2005・平成17年)
ヒスイ海岸に出かけると翡翠以外にもたくさんの美しい石と出会う。それらの石の名前を検索するのに便利。けれど石ころたちは掲載されている写真と同じ顔をしているとは限らなくて、やっぱり品定めにさんざん悩むことになる。この図鑑を持っていれば観光先の海岸でメノウやジャスパーなど、思わぬ宝物に会えることになりそうだ。

『川原の石ころ図鑑』(渡辺一夫、ポプラ社、2002・平成14年)
ヒスイ海岸の石ころは姫川などの河川から海に運ばれたものが再度浜辺に打ち上げられたものとされている。それでも姫川の川原とヒスイ海岸とでは見つけやすい石に違いがある。姫川の川原へ行って縄文のご先祖になったつもりで美しい石を探すと、たちまちのうちにバッグが一杯になってしまう。

『かわらの小石の図鑑』(千葉とき子・斉藤靖二、東海大学出版会、1996・平成8年)
多摩川・荒川・相模川、と関東の川原で拾える石ころが中心の本。日本列島の生い立ちの記事もわかりやすい。水晶やガーネット、トルマリン、など鉱物に愛情を注いできたように石ころにも愛情を注ぐとヒスイ・ハンティングの成功率も高くなる。願望成就には欲望+愛情が必要。

『日本列島の生い立ちを読む』(斉藤靖二、岩波書店、2007・平成19年)
いまさらながらにというべきか、プレートテクトニクス理論の登場によって地質学は根本から塗り替えられてしまった。日本列島は数億年昔に日本海寄りから太平洋寄りへと付加体がじょじょに陸地化して形成された。そのダイナミズムには心底驚いてしまう。翡翠は旧大陸の端っこ、現在の北陸あたりに最初に積もった付加体のなかで生成された。

日本翡翠の鉱物学・地球科学の章では、最初に日本翡翠の鉱物学と地球科学に関連のある本を紹介します。とはいっても、これが日本翡翠に関連するすべての資料というわけではありません。とりあえず「日本翡翠情報センター」の手元にある分というだけのことです。これらの書籍は小社で販売していません。貸出もしていません。お問合せいただいても内容について個別にご返答しかねます。インターネットの古書サイトで見つけられる場合もあると思います。確認はしていませんが、ホッサマグナ・ミュージアムで入手できる本もあります。因みにホッサマグナ・ミュージアムは新潟県糸魚川市にある市立博物館で、日本翡翠の歴史と鉱物学について学べます。

糸魚川市と関連団体主催の『ヒスイ文化フォーラム』報告書3冊は日本翡翠の古代史関連の資料も豊富ですが、ひとまずこのページに掲載しました。

目を引くのはホッサマグナ・ミュージアム(糸魚川市教育委員会)出版の書籍が多いことで、日本翡翠が宝石としての市民権を得ていない、など、やむを得ない事情があるにせよ、日本翡翠の鉱物学についての主要な情報発信源が一か所しかないというのは、どの程度それを信頼していいのか、いささか心配に感じています。

ヒスイ・ハンティングに出かけるなら必読書と推薦の石ころ関係の3冊もここにまとめました。鉱物から石ころへと興味が拡大してくると、石ころたちの可愛らしさがひしひしと身体に伝わるようになって、そこらの川原を歩くだけでも石たちへのひいては大地への愛情と敬意とで気持ちがいっぱいになります。

今日ではたくさんの天然石関係の本が出版されていて、インターネットに増殖するパワーストーン関連のホームページの多さときたら、もはや神さんでも掌握できないほど。けれど、あっちもこっちも、パワーストーンの効能やら、天然石の鉱物学的記載に大忙しで、あるいはめくらましをくっていて、「石は可愛い」「石は美しい」「石は楽しい」といった記事にはなかなか出会えません。それでも翡翠だけでなく、すべての石ころは愛らしいし、石ころは美しい、さらには石ころは神秘そのもの。この神秘を遠くのあなたと分かち合えたらと思っています。